地域的な取り組みの重要性
地域的に取り組むために
フレイル予防に限らず、近年は高齢者への介護全般の取り組みを地域的に取り組む必要性が問われています。介護の本質とは、人生の最後まで自分らしく生きていけるように尊厳を守りつつサポートすることです。寝たきりや認知症になった場合には介護が必須ですが、それでも多くの高齢者は食事やトイレなどを自分の力で行いたいと思っています。要介護状態になるべくならないように、早い段階から重症化のリスクを軽減する取り組みが必要です。そのためには、地域一体となって高齢者をサポートしなければなりません。
また、介護にかかる費用を抑えるという点でも地域的な取り組みは重要です。介護保険の財源の半分は国民が納める介護保険料で成り立っているものの、日本は少子高齢化が続いており、このままでは納税者の数が減る一方で被保険者の数は増加し続け、介護保険制度が崩壊してしまいます。財源に余裕を持たせることを目的に、2015年の制度改正時には要支援者が利用する通所介護と訪問介護が介護保険の適用から外されました。その代わりに自治体の総合事業に移管され、重症化まで至らない高齢者をサポートするために全国の自治体が介護分野の動きを活発化しています。
現状の課題と今後の展望
高齢者向けの保健事業は国の補助金制度により助成されているものの、フレイル予防に関する事業には地域格差があります。介護予防を目的とした高齢者サロンや生活支援サービスなどのいわゆる「通いの場」の拡大が進められているものの、高齢者の参加率は全体の5%以下と低い数字です。これまで、フレイル予防と介護予防、生活習慣病予防の分野はそれぞれ別の制度で実施されており、後期高齢者医療制度に移行するタイミングで保険者や事業内容が異なる点が問題視されていました。後期高齢者医療事業は自治体ごとに運営している特別地方公共団体が実施しており、組織の特性上自治体ごとに格差が生まれてしまうのです。このことから、厚生労働省は高齢者のフレイル予防の取り組み強化のために、介護保険と医療保険の一部事業を一体化させ、より効率的にサービスを提供できる組織作りを目指す方針を定めました。以下に、高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施に関する資料を掲載しますので、参考にしてください。
これまで分離していた各事業の一体化に関する取り組み事例がまとめられた資料です。また、介護予防への取り組みを推進するために、上述で触れた「通いの場」の高機能化も検討されています。後期高齢者医療制度の保険者や国の補助を財源として、保健士や栄養士、歯科衛生士、リハビリ職などの専門職を配置し、フレイル予防や保健指導などの取り組みを強化することで地域一体となって介護を実施し、高齢者をサポートする考えです。
介護職として携わる人へ
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サポートする側が意識すべき点
更新日高齢者をサポートする側が意識すべき点を紹介します。心身共に弱っている高齢者をサポートするためには、安全面・生活面に十分配慮しながらフレイル予防に取り組み、積極的にコミュニケーションを図りつつ状態を観察する必要があります。
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その他の方法
更新日栄養士によるサポートや運動療法による身体機能の維持の他にも、フレイル予防に効果のある方法を紹介します。持病を持つ高齢者は症状の状態を鑑みながら、自身に適した療法を用いてフレイル予防に取り組む必要があります。
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診断基準とリスク
更新日フレイルの診断基準は、「意図せず体重が年間で5キロ以上減少する」「何をするにも面倒だと感じる日が週に3~4日以上ある」「歩く速さが遅くなる」「握力が弱くなる」「運動をする機会が減り、身体活動量が低下している」の5項目です。