適切な運動
運動療法について
加齢に伴う身体機能の低下を防ぐためには運動療法が効果的です。運動には大きく分けて「有酸素運動」と「無酸素運動」の2つがあり、それぞれを上手く組み合わせて実施する必要があります。以下に有酸素運動と無酸素運動の効果や、おすすめの運動療法を紹介していきます。
有酸素運動
有酸素運動とは歩行や水泳などの全身運動を指し、酸素を取り入れて糖質や遊離脂肪酸を燃焼させる効果があります。「ややきつい」と感じる程度の運動が効果的で、心拍数で120/分あるいは安静時の1.5~2倍程度が目安です。有酸素運動時は糖質や遊離脂肪酸をエネルギー源とすることから、血糖や脂質に異常がある高齢者の状態の回復・改善が見込めます。糖尿病の人が運動をする場合、歩行を1日に20~30分×2回が適当とされていますが、これまでの運動習慣にも左右されるので、無理のない範囲から始めて徐々に強度を上げていくことをおすすめします。また、1日1回、血糖上昇を抑えるために食後に1時間程度まとめて歩行するという方法もあります。
無酸素運動
無酸素運動は酸素を取り入れずに行う運動で、筋肉に負荷をかけて筋力を鍛える効果があります。ダンベルを用いた運動やスクワットなど、いわゆる筋トレと呼ばれるものであり、短い時間で多くのエネルギーを消費します。ただし、乳酸が溜まり疲れやすいため長時間行うことはおすすめしません。フレイル予防として無酸素運動を取り入れる場合、まずは軽い運動から徐々に慣らしていきましょう。週2回以上を目安に行うのが望ましいです。腰やひざの状態が悪い場合は、プールなどの水中で歩行する方法がおすすめです。水中であれば腰やひざに負担がかからず、有酸素運動と無酸素運動両方の効果が得られます。日常生活の中で運動を取り入れるのであれば、椅子に座った状態で足踏みをしたり、ひざを高く上げて維持するなどの方法がおすすめです。
それぞれの状況に応じた運動を
運動療法は個々の運動習慣に応じて計画する必要があります。これまでほとんど運動習慣がなかった高齢者に対して、最初から負荷の大きい運動をすすめてはいけません。また、慢性的な疾患がある場合は、事前に医師と相談してから内容を決めましょう。運動で筋肉を強化することで身体のバランスがよくなり、転倒防止の効果が期待できます。また、適度な運動は心理的にもいい効果を発揮します。気分がリフレッシュされ、元気に日常生活を過ごせます。運動を通して仲間ができ、コミュニティ内での社会的役割が与えられることで、孤独による閉じこもりを防ぐ効果もあります。
介護職として携わる人へ
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サポートする側が意識すべき点
更新日高齢者をサポートする側が意識すべき点を紹介します。心身共に弱っている高齢者をサポートするためには、安全面・生活面に十分配慮しながらフレイル予防に取り組み、積極的にコミュニケーションを図りつつ状態を観察する必要があります。
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その他の方法
更新日栄養士によるサポートや運動療法による身体機能の維持の他にも、フレイル予防に効果のある方法を紹介します。持病を持つ高齢者は症状の状態を鑑みながら、自身に適した療法を用いてフレイル予防に取り組む必要があります。
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診断基準とリスク
更新日フレイルの診断基準は、「意図せず体重が年間で5キロ以上減少する」「何をするにも面倒だと感じる日が週に3~4日以上ある」「歩く速さが遅くなる」「握力が弱くなる」「運動をする機会が減り、身体活動量が低下している」の5項目です。