栄養士による働きかけ
食事の重要性
高齢者にとって日々の食事は大きな意味を持ちます。単なる栄養補給だけでなく、生きがいや楽しみにつながる行為であるため、それをサポートする栄養士の役割は非常に重要です。食事には、買い物や料理といった生活活動が伴うため、身体機能の低下を防止するという観点からも大きな効果を期待できます。生活活動能力を維持することは、日常生活の安定にもつながります。
また、食事を通して会話を楽しむことで、心理的なフレイル予防にも効果があります。独りきりで食事をする、いわゆる「孤食」はフレイルを進行させる要因となります。同居者がいるにもかかわらず日常的に孤食をしている高齢者は、同居者と一緒に食事をしている高齢者と比べて4倍もうつになりやすいというデータがあります。そのため、誰かと食事をすることはフレイル予防に必須なのです。なお、50~65歳の人は栄養過多やメタボ予防に関連する栄養指導が推奨されていますが、65歳以上になると低栄養予防にシフトチェンジしていく傾向にあります。
意識すべきポイント
フレイル予防に取り組む栄養士が意識すべきポイントは、「エネルギーの摂取」と「たんぱく質の摂取」の2つです。まず、エネルギーの摂取についてですが、エネルギーは身体活動の基本となるため、低栄養状態の回避という観点から重要です。十分なエネルギーが摂取できているかどうかはBMI指数から確認できるので、栄養士は対象者のBMIをこまめに確認しましょう。たんぱく質の摂取については、身体の資本となるエネルギーへ変換されるだけでなく、筋肉量の低下を防ぐためにも必要です。肉、魚、大豆製品、卵などの食材を効果的に摂取しましょう。高齢者になってもたんぱく質を十分に摂取していれば筋肉量は増えることが判明しています。そのため、栄養士は効率的にたんぱく質を摂取できるメニューを考えなければなりません。加えて、ビタミンDはカルシウムの摂取を促進し、骨の代謝をサポートする効果があるため、魚などのビタミンDが豊富に含まれている食材を積極的にメニューに取り入れるようにしましょう。
以下に、フレイル予防に役立つ食材などをまとめている資料を紹介しますので、参考にしてください。
個々の状態に応じた栄養指導を
栄養指導を行う際は、画一的な内容ではなく個々のライフステージに応じた栄養指導が求められます。近年は肥満や糖尿病の人が増えており、その場合は過剰な栄養摂取を避けるべきです。基本的に、高齢者はしっかりと食べて必要な栄養を摂取することが大切ですが、すべての高齢者がそれにあてはまるのではないことを念頭に置き、サポートしていく必要があります。
介護職として携わる人へ
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サポートする側が意識すべき点
更新日高齢者をサポートする側が意識すべき点を紹介します。心身共に弱っている高齢者をサポートするためには、安全面・生活面に十分配慮しながらフレイル予防に取り組み、積極的にコミュニケーションを図りつつ状態を観察する必要があります。
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その他の方法
更新日栄養士によるサポートや運動療法による身体機能の維持の他にも、フレイル予防に効果のある方法を紹介します。持病を持つ高齢者は症状の状態を鑑みながら、自身に適した療法を用いてフレイル予防に取り組む必要があります。
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診断基準とリスク
更新日フレイルの診断基準は、「意図せず体重が年間で5キロ以上減少する」「何をするにも面倒だと感じる日が週に3~4日以上ある」「歩く速さが遅くなる」「握力が弱くなる」「運動をする機会が減り、身体活動量が低下している」の5項目です。